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第310回:新春特別講演 ~知る!読む!整形外科~

年初め恒例の特別講演としまして、今回は『知る!読む!整形外科』というテーマで講演をしていただきました。上肢を中心に深く掘り下げ、臨床で求められる的を射た再現性の良い撮影法について勉強していきました。読影にはどのような画像が必要なのかを一緒に考えていきましょう!!

「上肢X線撮影法~骨格の特性と個体差を理解する~」
三菱神戸病院 高井 夏樹 技師


学生時代の教科書に載っていた撮影法は、基本肢位が可能な方を対象にしている。しかし、痛みがあり体位変換が不自由である場合や、患者それぞれが持つ個体差で画像のばらつきが生まれる。今回は関節の運動軸を正しく理解することで、画像のばらつきを抑え、患者に無理な体勢を強いることなく、柔軟な撮影法へ応用する手法を講義して頂いた。上肢特有の動きのメカニズム、信頼のおける体表指標を理解することで、ポジショニングの大切さを習得できたと考えている。

「肩関節周囲炎の読影」
信原病院 森岡 重敏 技師

 

肩関節は複合関節であるため多くの撮影法があり、撮影法を理解するためには腱板などの軟部組織の機能解剖を知る必要がある。石灰沈着性腱炎、上腕二頭筋長頭筋腱炎、肩関節拘縮、疼痛性関節制動症、肩峰下滑液包炎などの肩関節疾患の撮影から治療までを、画像を交え解りやすく講義して頂いた。
肩関節疾患の多様な病態を観察できる方法として、広背筋、菱形筋などを弛緩させることができる肩関節の臥位撮影を紹介された。上肢の土台である肩甲骨を体軸正面で撮影する事で再現性が得られ正確な評価につながるとして推奨されている。

 

これからも当たり前の業務の中にも疑問を持って日々の技術を研鑽していて頂けたらと思います。

第309回:冬期集中講座 ~MRIを読む!~

集中講座の第3弾は、MRI を頭部・上腹部中心に勉強していきました。MRI は部位や疾患に適したシーケンスを組むため、撮像方法が多く、多種多様な画像がでてきます。そのため、画像を診ることがとても難しいと感じている方もおられると思いますが、一筋縄ではいかないところもMRI の魅力の1つといえるかもしれません。
 

 

「頭部MRIの診かた」
明石市立市民病院 岩井 良太 技師

 

急性期脳梗塞の発見にMRIは必要不可欠である。特にDWIは簡便で分かりやすいのが特徴で高信号になったら脳梗塞と思いがちであるが、ここに落とし穴がある。T2-Shine Throughという現象が起きていると脳梗塞による高信号と誤認してしまう恐れがあるため、常にADC-MAPとセットで考えるようにしなければならない。脳梗塞は水分子が動きにくい(制限されている)というのが重要で、これがDWIでは高信号、ADCでは低信号となる。
脳梗塞に関してMRI信号に騙されることがないように、経時的信号変化や、発生機序などを理解し、神経学的症状と照らし合わせて読むことが大切であると考える。

 

 

「上腹部MRIの診かた」
三菱神戸病院 山田 達也 技師

 

現在腹部ルーチン撮像に対する要求は高まってきており、主なものとしては高SNR、高分解能、体動補正などがあげられる。これらの要求を改善し各画像の特徴を生かし検査を進めていくために、撮像原理を知ることが必要である。
検査目的によって、テーラーメイドの撮影シーケンスが必要になることもある。患者の状態をリアルタイムに把握し何処をどのように描出するのか、その為には何が必要なのかを考えなければならない。検査中の患者の状態が変化し、息止め撮影、呼吸同期撮影などの選択にも苦慮する場合などは撮像シーケンスを変更する必要もある。
検査前(問診・前処置)、検査中(追加撮像は?・患者の様子は?)、検査後(フィードバック)の流れを常に考え、今後の撮像に活かして欲しい。

第308回:秋期集中講座 ~CTを読む!~

集中講座の第二弾としてCT について勉強していきました。CT は新人さんにとって難しいモダリティと思われがちですが、基礎さえ作ってしまえばこんなにもやり甲斐のある検査なのだと気付かされるはず!


 

「撮って診る!腹部CT」
明舞中央病院 須賀 俊夫 技師


新人の頃どうやって勉強してたかな?もし今の自分が新人の頃の自分にアドバイスできるなら、きっと“正常解剖を理解しましょう”って言うだろう。画像診断は「存在診断」と「質的診断」があるが、まず病変の有無を評価する「存在診断」を行うには、正常解剖をしり、それがCTでどのように映るのかを理解することが必須だからである。写真を読むとき、いきなり病気を探すのではなく、まず腹部全体の状態をみて違和感(正常との違い)を感じとることが読影の第一歩である。
撮影前に疾患を予測することも重要で、そのためには病気の症状を知ることも必要であるそして疾患が有ると判断したものが、どのような状態なのかを必ず調べ、フィードバックも怠ることがないように。この繰り返しが“腹部CTを読めるようになる”為の近道であると考える。

「撮って診る!胸部CT」
明石医療センター 久森 克利


適切な画像情報を提示するための読影には「検査目的を知るための読影」「画像特性を考慮した読影」「異常部位を伝えるための読影」の3つがあり、正常画像解剖やアーチファクト・スキャンプロトコルなどの画像特性を変化させる要因などを理解しておくことが必要である。胸部CT検査の撮影において最も基本的で重要なものは呼吸の管理である。
昔からGGOをみると「肺腺癌」と経験により解っていたが2004年に肺がんの遺伝子変異が発見され、過去の知見が分子生物学に裏付けしたことになる。
今後、診療放射線技師には「読影補助」の役割が増加すると思われる。良い検査(読影)には、十分な「撮影技術」と「臨床知識」が欠かせない。助かる肺がんを見つけるために、医師が正しく診断できるような画像を提供できるかは、診療放射線技師の腕にかかっている。

第307回:夏期集中講座 ~一般撮影を読む!~

今回は、夏期集中講座として胸部・腹部・整形外科領域とあらゆる範囲の一般撮影について勉強を進めていきました。一般撮影は新人さんが最初に勉強していくことの多いモダリティです。診療放射線技師にとって基本となる検査ですが、ベテランさんも侮るなかれ、決して簡単な検査ではありません!撮影方法はもちろんのこと、読み方を覚えることで、そこから多くのものが診えてきます。

 


「骨の写真を読む~整形外科領域を中心に~」
大久保病院    田中 翔梧  技師

 

骨軟部領域におけるX線画像は、骨折・骨腫瘍・関節炎や軟部疾患も異常所見として描出が可能である。撮影は2方向以上が基本であり、小児の場合には比較として両側を撮影することもある。X線検査の読影手順はABCD’Sの方法で考えて欲しい。A:alignment(配列)B:bone mineralzation(骨密度)C:cartilage(関節軟骨)D:distribution(病変の分布)S:soft tissue(軟部組織)。
骨折では、変位・屈曲・回旋の評価により異常所見を検出できる。骨の明らかな転位がない場合でも、周囲軟部組織の異常所見により検出することも可能である。しかし、患者の状態にもよるが、少しの左右・上下のずれで偽陰性・偽陽性で描出されることもあるので正確な撮影を心掛ける。撮影方法や臨床基礎知識をよく理解し、診断に有益な画像、再現性の高い画像を撮像することが診療放射線技師の使命である。

 

 

「胸部写真、腹部写真を読む」
明舞中央病院   羽田 安孝 技師

 

日常において、どのような胸部疾患が疑われても、第一選択は胸部単純写真である。そして入院時の結核などの感染症発見にも一役かうこともある。
胸部単純写真を読影する上で知っておくべき解剖は、肺、頸部、縦隔、骨、血管のそれぞれを単独ではなく、相互関係も併せて覚える必要がある。胸部単純写真の読影において①正しく撮影されているかどうか②胸部正面像の区分③読影の順序の3点に注目してほしい。
腹部単純写真の適応は、急性腹症、尿管結石・膵石などの結石、石灰化やイレウスを疑うとき、異物の確認などである。しかし、腹部単純写真の目的は骨から空気までの病変を診断で、ワイドラチチュードで全体をよく見せるための濃度のため、写真の濃度についての評価は難しい。読影する時は深読みしないようにしなければならないが、まず何かあるというような眼で読影しなければならない。
診療放射線技師が行うべきことは、読影に適したX線写真を撮影するため撮影技術にフィードバックする必要性がある
適切な撮影条件・適切な現像処理(画像処理)・適切なポジショニング・再現性のある呼吸
これらのことを常に頭において日々の業務の中で創意工夫をしていくことが大切であると考える。

第306回:Focusing on Women’s Healthcare

女性の健康維持・増進は現代社会に求められる重要な課題です。婦人科疾患に対して適切な検査を行うためには、疾患についての撮影法や読影技術だけでなく、女性特有の解剖や生理学的特徴を理解することが必須です。基礎力を養い、婦人科疾患に対してワンステップ上の検査を目指した内容で4人の講師に発表していただいた。

「婦人科疾患におけるCTの役割」:

明舞中央病院 筧 翔 技師
 

婦人科領域ではMRIが画像診断の中心となっているが、あえてCTの活用法を取り上げた。主に広範囲を短時間で撮像できるため、急性腹症や転移検索に用いられる。石灰化の描出が高く、またMRIと比べ安価、騒音・閉塞感が少ないなどの利点がある。X線被曝や造影剤の使用などの問題もあるが、有用な情報が得られるモダリティである。

 

「当院における婦人科領域のMRI撮像」:

明石市民病院 中村 規 技師
 

癌の進行期分類を知ることで求められる画像がどんなものかが理解できる。画像診断ガイドラインはEBMを目指したもので、推奨グレードで各モダリティを分類している。MRIは子宮・卵巣、骨盤内腫瘤の鑑別診断に有用で副交感神経遮断剤の投与を推奨している。

「当院における婦人科領域のMRI撮像」:

明石市民病院 平山 春樹 技師
 

1.5Tと3.0Tの違いはSNRが高くなり、短時間撮像、高分解能の画像が得られるメリットとSARの増大、T1時間の延長などのデメリットもある。撮像時の工夫として副交感神経遮断剤の投与と腹部にスポンジを乗せてバストバンドで圧迫するなどきれいな画像を提供していた。BLADEを使用した呼吸の動きによるアーチファクトの影響が改善した症例提示があり、撮像法の工夫も重要である。

「婦人科疾患でのMRIの診方~読影を中心に~」:

明石医療センター 佃 将行 技師
 

子宮体がんのキーワードはSEEでDynamicで感度・特異度の精度が高い。子宮頸がんはSTROMAL RINGという頸部間質リングがキーワードである。子宮筋腫と子宮肉腫の鑑別として①造影効果が高い②境界不明瞭は従来より挙げられていたが、新たに③DWIで高信号(ADC値1.05~1.23)④LDHが高い⑤MRSでLactate上昇を加えることでより精度が高まると考えられる。卵巣腫瘍の良悪の鑑別ではT1信号、T2信号、単房性か多房性か、造影効果があるかないかでフローチャートがあり、症例画像を交えた見るべきポイントを解説した。

第305回:乳がんをみつけるために

現在、女性の罹患率トップである乳がんはメディアにもよくとりあげられ、関心も高まっています。今回は“乳がんを見つけるために”をテーマに、マンモグラフィ、エコー、MRIそれぞれの立場より発表を行った。

マンモグラフィでわかること ~写真を見てみよう~:
大久保病院 川嶋 咲由


マンモグラフィは乳がん検診等で行われている馴染みのある検査である。簡便であるが、圧迫などの侵襲を伴うため、安心して検査を受けてもらうために検査時のコミュニケーションはとても重要である。マンモグラフィでは腫瘤の有無、腫瘤の大きさや形、石灰化の有無を診ていく。特に石灰化は乳がん細胞の一部やがん細胞の周囲の壊死によって起こることもあり、触診では発見できない5mmくらいの小さいがんの発見に大きな役割を担っている。

乳腺エコーStep up:
明舞中央病院 岡田 陽子

 

乳腺疾患の考え方は腫瘤性か非腫瘤性かに分けられる。腫瘤性病変の評価ポイントは形状や境界、内部エコーなどをみていくが、超音波画像は腫瘤の組織像に反映されるため、画像の成り立ちや、それぞれの特徴を理解するとよい。現在では、組織の硬さを画像化するエラストグラフィなどの補助ツールも活用されている。乳腺組織は多様な構造を呈し、悪性腫瘍と鑑別が必要な場合など、問診などで患者背景を知ることで、画像を推察するヒントが得られる場合もある。
 

乳腺MRI ~撮像から読影まで~:
加古川医療センター 池田 敦子

MRIでは、1回の検査で両側の乳房を評価することができ、癌を検出する感度は高く、癌の拡がり診断やDCISの検出に大きな役割を担っている。しかし、費用、時間、侵襲性等の理由から、スクリーニングではなく他検査によって見つかった疑わしい症例の精密検査に使われる。乳腺MRIは使用装置や撮像方法など各施設で悩むことも多い。検査後の画像再構成や解析など作業量も多くなり、読影も形状や造影パターンなど煩雑であるが、得られる情報量はとても多く、術前の精査・治療効果判定には非常に有用な検査である。

 

第304回:新春特別講演~診療放射線技師の未来~

機器の未来展望について:

GEヘルスケアジャパン

CT・MRI・核医学・マンモグラフィーについて、RSNA報告を中心に、現実的に近い将来から近未来の技術まで、それぞれの機器の未来展望を紹介する。CTでは、高分解能、高速化、カバレッジの三大要素をよりレベルの上げた性能をもつ機器が登場していくものである。MRIは高磁場機器の進歩はもちろんのこと、患者の体格を選ばない柔らかい布のような新しいコイルが開発されている。核医学では、半導体検出器が搭載された機器の登場により、時間分解能および解像度が大幅に向上した。マンモグラフィーは、ブッキーの角に丸みを持たせ,体を密着させた際の痛みを抑えることで患者の不安や痛みを軽減させる工夫がされている。また、トモシンセシス技術により読影を効率化するアプリケーションも登場している。いずれの機器も、患者の状態に応じて柔軟に条件を変更し,QOL向上にも役立つものと考えられる。

 

診療放射線技師のキャリアビジョン:

兵庫県放射線技師会 副会長 半蔀 英敏

昭和26年の診療X線技師法から始まり約65年、今日では診療放射線技師の求められる技術は年々進化し変化しているが、「アセスメント」という考えはいつの時代も変わらぬものである。診療放射線技師におけるアセスメントとは、事前に最大限の情報を得て、モダリティの特性を理解し、発想力や知識をもって患者の状態に合わせた判断をすることである。“検査をすること”とはまさしくアセスメントが基本であり、その中でも治療や他検査の必要性の判断、そして病状把握(疾患の同定や否定)をするための読影力は重要となる。
現在、若い技師諸君は、何を学べば良いか目標が定まらず模索している状況かもしれない。ある程度の経験を積んだ技師であっても、これから何をすれば良いか悩んでいるかもしれない。また、画像診断部門が現在のような保険診療体制でなくなるかもしれない現実に我々は危機感をもち、医療全体をみて活躍の場をどこに求めるか?どこに提供できるか?を考える時期にさしかかっている。これらの状況を打破するためには、自分が置かれた状況を理解し対応していかなければならない。
職場においても診療放射線技師の業務拡大は、今後の大きな課題である。ただ撮影室に閉じこもり、与えられた検査を遂行するだけでなく、業務範囲の固定観念を打破し、できることを見出す努力を惜しまないようにしていただきたい。もとより持つ技術のアピールが最も大切であると思われるが、一歩引いて、求められるカテゴリーが、撮影(検査)以外で何があるかを是非考えていただきたいと思う。つまり、これからの診療放射線技師のキャリアビジョンには、当たり前のように医療チームに参画し、他職種がもつ発想や考えに着目し、医療全体の流れに向けて対応できるスキルアップが最も重要となってくるのである。そのために、診療放射線技師職域の業務アセスメントや立場に応じたマネジメントについて考えることは重要であり、情報収集は必須であるのだと思う。
診療放射線技師の方向性に悩みを持たれたら、このはりまCT研究会に参加して答えになるヒントを感じ、日本診療放射線技師会、兵庫県放射線技師会のホームページを是非閲覧頂き、診療放射線技師を取り巻く状況の理解・自己研鑚のための情報収集のツールとしてご利用いただければ幸いである。新しい事を始めるには「無理」「困難」なことも付き物であるが、その先には良い未来があると信じている。そして職能団体に入会することで、その意味を肌で感じてほしい。

第303回:外傷時、どう撮る!どこを診る!?

どのような画像が必要なのか ~整形領域を中心に~:

大久保病院 内藤 祐介

外傷による骨折の原因は様々あり、年齢相によって骨折の特徴に違いがみられる。特に高齢者の骨折は骨粗鬆症が基盤となり、比較的軽い外力で受傷する。大腿骨近位部骨折では歩行レベルが低下し、寝たきりによる要介護状態に陥りやすい。
画像診断は、骨折の治療方針や手術方法の決定に大きく関与するため、X線画像では、治療前後における再現性、CT画像では骨軸を意識したMPR再構成など、医師が求めている画像を意識しながら撮影を行うことが重要である。

 

 

頭部外傷診療における技師の役割 ~画像の診るべきポイント~

大西脳神経外科病院 橋本 真輔

頭部外傷の病態は、一次性損傷として、外力による力学的損傷(軟部損傷・頭蓋骨骨折など)、二次性損傷として、血腫や浮腫などで脳が圧迫されることによる頭蓋内圧亢進・脳ヘルニアがあり、画像においては、まずどのような外力が加わったのかみるため、頭蓋軟部の皮下血腫や腫脹を観察する。
また、重篤な頭部外傷では、頭蓋内血腫などの他に頸髄損傷の有無を評価することが重要となり、頭頸部を同時に撮影することで短時間に頸椎損傷を否定することもCTのもう一つの役割といえる。
画像診断において、遅発性出血の有無を診るための再検査の必要性や、CTでは診断が難しく、MRIが必要な“びまん性軸索損傷”があることなど、頭部外傷全般の知識を持って読影する必要がある。

第302回:造影検査を知ろう~単純CTから一歩踏み込んで~

造影剤の基礎知識:

明舞中央病院 羽田 安孝

現在多く使用されているヨード造影剤について、基礎的事項や副作用など知っておくことは検査を行う上で重要である。副作用は造影剤投与後の発症時期により、即時性と遅延性に分けられ、症状は軽微なものからショックなどの重篤なものまで多様である。初期対応が重要であるため、検査時は患者の状態を観察し、救急カートの定期的なチェックや緊急時のシュミレーションなど安全対策が必要となる。
造影剤の血管外漏出も注意すべき問題の1つである。穿刺においては、必ず安全な経路を選択し、循環障害のある場合は特に慎重に行う。漏出した場合は、穿刺側の腕を挙上し冷やすとよい。血管の解剖学的特徴から、右腕を穿刺することが造影効果や画質面で利点が多く基本となるが、シャント形成後や乳がんの術後などは、患側からの造影剤注入は避ける。
造影CT検査で最大の情報を引き出すためには、造影剤濃度についても考慮しなければならない。濃度に影響を与える要因の中で、造影剤の投与方法(注入量・速度・時間)、撮影タイミングなどは、撮影者により変えることができる因子であり、重要となるのは、TDC(time density curve:時間濃度曲線)である。TDCとは横軸に時間、縦軸にCT値(濃度)を表したもので、その曲線は、造影剤が最初に到達する時間は一定で、最高濃度は注入速度・注入量・注入時間に比例し、効果持続時間は注入時間に比例する。  
造影剤の特性を知り、患者の状態などを考慮しながら、投与方法を工夫することで、高い造影効果と再現性の良い撮影が可能といえる。

​造影検査の技術:

明舞中央病院 筧 翔

造影検査を行う意義は、単純CT検査で得ることができない、詳細な情報を得ることで、より正確な診断に結び付けるところにある。緊急度の高い疾患においては、治療方針を迅速に決定することに役立ち、救命につながるといえる。造影CT検査が有効である早期治療が必要な疾患として、大動脈解離、肺動脈塞栓症/深部静脈血栓症、絞扼性イレウス、急性膵炎などがあげられる。
大動脈解離での造影手技のポイントは、解離腔の確認のために、早期相、後期相を撮影していくことである。それらの画像を再構成し、範囲の同定・分類などを行う。
絞扼性イレウスは、血行遮断開始から、いかに早期に発見し治療するかにつきる。血行障害の範囲では動脈相は染まりが弱く、平衡相で造影されるため、造影効果の違いにより虚血範囲の同定が可能である。また、腸管の走行が明瞭になり、狭窄部位や腸管壁の状態が解りやすくなるという利点もある。

第301回:新人さん必見~当直に向けてのアドバイス~

腹部編:
明舞中央病院 須賀 俊夫

新人にとって、当直時に不安に思うことは多くあるが、最低限知っておくべき事は、緊急性があるかないかの判断である。検査においては事前に多くの情報を得て、撮影に臨むことが必要である。
急性腹症では、炎症、空気、通過障害の3つの項目をチェックする。炎症のサインであるdirty fat signは、炎症臓器の周囲脂肪組織に水濃度が混ざり、濃度上昇がみられることからわかる。
消化管穿孔は、穿孔により腸管内容が漏れ出し、腹膜炎を引き起こす病態であるが、臓器条件だけでは、free airや炎症を判断しにくい場合があるため、脂肪条件でもチェックをしなければならない。絞扼性イレウスでは、腸管壊死を伴い急激に症状が悪化するため緊急手術を要する。早期発見が重要であるため、通過障害では部位の同定と原因検索を行うために、積極的に再構成画像の作成を行ってほしい。

循環器・血管編:
明石医療センター 久森 克利

救急医療での診療放射線技師の役割は、①診療の目的の把握、②安全で効率的な検査の施行、③最適な画像の提供と補助読影である。刻一刻と変化する患者の容態に対応できるように、事前準備と情報収集を行い、時間配分を常に意識付けることが重要である。
循環器疾患において、急性冠症候群(ACS)や、急性心不全などは緊急度の高い疾患である。胸部X線撮影が基本になるが、主にポータブルでの撮影となるため、体位変換の際におこりうる合併症についても気を付けて検査しなければならない。また、急性大動脈症候群や急性動脈閉塞などの急性に発症する血管疾患も、発症から治療開始までをいかに短縮できるかが重要となり、CT検査でMPRや3D画像を作成することで診断と治療に威力を発揮する。


頭部編:
明舞中央病院 羽田 安孝

時間外の撮影では、①適切な状況判断、②撮影から画像チェック、③結果の伝達・確認を技師1人で行うことが一般的である。これらを迅速かつ的確に終了させることが救脳、ひいては救命につながるといえる。疾患を予測できるよう、前兆として主にどんな症状がみられるのかを知っておくと良い。
通常のルーチンではOM lineで撮影するが、意識状態によっては舌根沈下の危険性があるため、気道確保を優先する。矢状面でしっかりと左右を比較し、脳実質の異常像や脳溝・脳室の評価を行う。
疾患に特徴的なサインを見逃さないことは重要であるが、画像だけではなく、患者の容態を観察しながら検査を行うことが必要である。

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